|
コラム
|
麻疹(はしか)よりも怖い「数の暴力」
最近、関東地方を中心に、麻疹が流行していることをご存じだろうか。高校や大学では、休校が相次いでいるという。用心に越したことはない。だが、永田町では、麻疹に勝る猛威を振るっているのが「数の暴力」だ。たとえば、去る14日には、ついにというべきか、やはりというべきか、国民投票法案が可決・成立してしまった。国民的な合意を得ながら進めていかなければならない憲法改正手続きが、早くも「数の論理」で強引に決められた。多勢に無勢の喩えではないが、残念ながら、やはり巨大与党の前では、野党の力は高が知れている。参議院における審議の段階で、急に与党に歩み寄った民主党の行動も、理解に苦しむ▲数による横暴が見られたのは、国民投票法だけではない。イラク特措法の2年間延長も、与党の賛成多数でゴリ押しされようとしている。各国が撤退しつつある中、さらには国民の大多数も延長に反対している中、米国のご機嫌をとるためか、安倍内閣は迷うことなく延長に踏み切ろうとしている。先日の少年法の改正の際にも、与党は強行採決を試みた。与党の執行部には「会期中にできるだけ多くの法案を成立させたい」との強い思いがあるようだが、官邸や与党の都合のため、審議不十分のまま、次から次に法案を通してよいものなのか▲かつての自民党も、単独で採決したり、ときには強行採決をしたりした。だが、その前提は、自民党内に批判勢力があり、そのハードルを越えて行われた。言い換えれば、自民党内でチェック機能が果たされていたのである。それに対し、現在の自民党にも与党にも、そうした機能は微塵もない。干されるのが怖いのか、「抵抗勢力」のレッテルが貼られるのが怖いのかはともかくも、官邸や党執行部主導でドンドン押し切られている。だから与党は「翼賛機関」になり下がってしまっている▲万が一、与党が来る参議院選挙で過半数を獲得してしまえば、この傾向は、少なくとも今後2年間は続くことになる。その間、あれよ、あれよという間に、消費税率は8%、いや、場合によってはいっきに10%まで引き上げられるだろう。集団的自衛権の行使も、間違いなく可能にされる。大都市優遇政策や弱肉強食主義が、ますます顕著になることも確かだ。北朝鮮では政府と軍部との間に緊張関係があるというが、わが国の場合、内閣と党執行部のやりたい放題だ。麻疹はやがて沈静化するだろう。だが、このまま手を拱いていては、「数の暴力」はますます激しさを増すことになる。何とかしなければ…。
(平成19年5月16日)
|