コラム

国民を愚弄するなかれ

偽装や捏造―毎日のように新聞紙面に躍る「事件」だ。マンションやホテルのみならず、老舗の製菓会社やメーカー、証券会社、テレビ局までも、国民をたぶらかしていた。思わず、「ブルータス、お前もか!」と叫びたくなる。もとより第一の責任は、それぞれの企業、とりわけその経営責任者にある。このようなモラル・ハザードを起こしている大人の社会を見て、青少年たちはどのように思うだろうか。教員免許云々を論じる前に、まずは大人が襟を正す必要があるのではないか▲しかし、さらにいえば、売り上げや視聴率を伸ばすためであれば、国民を誤魔化してもいいといった風潮が背景にある。儲けるためなら手段を問わず―この拝金主義の蔓延は、闇雲な規制緩和と市場原理主義を推進したツケでもある。かつてわが国には美しき武士道があった。山本周五郎はその小説『御定法』の中で、「(侍として)二つだけは赦すことのできぬものがある。一つは盗みをすること、一つは死にどきを見誤ることだ」と記している。だが、このような武士道精神を唱えれば、小泉・安倍内閣では「抵抗勢力」とのレッテルが貼られる▲一連の偽装・捏造はあってはならない事件だが、その発覚を「前進」と捉えることもできよう。もしも偽装・捏造が暴かれることがなければ、国民はずっと騙され、危険にも晒され続けた。内部告発であれ何であれ、国民への背信行為が明らかになり、遅ればせながら「誤魔化しは許されない」との流れが起きつつあることは歓迎される。国民が商品や製品、報道の中身を十分に吟味し、「本物」を求めるようになりつつあることも評価されてよい▲国民の「本物志向」は、政治そのものにも向けられている。発足から5ヶ月、ついにというべきか、ようやくというべきか、一部の世論調査によれば、安倍内閣の支持率と不支持率が逆転した。政府高官の相次ぐ辞任や一連の「やらせ」の発覚、厚労相の暴言なども要因だが、要は安倍内閣が国民に視線を向けていないからだ。国民は格差や雇用、社会保障制度の抜本改善を渇望しているにもかかわらず、安倍内閣は教育再生と社会保険庁改革、公務員制度改革が最優先課題だという。不祥事を起こした企業の例をあげるまでもなく、国民を軽視・愚弄し続ければ、どのような結果になるか自明のはずだ。

(平成19年2月14日)

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