コラム

わが国にも「振り子」が必要だ

しばしば誤解されていることがある。それは「社会民主主義」なる言葉だ。「社会主義」と似ているため、かつてのソ連を連想しがちになる。社会主義は資本主義を否定し、労働者のための社会を目指すものだが、社会民主主義はまったく異なる。機会平等に重きを置き、競争原理を尊ぶ自由主義に対し、社会民主主義は議会を通じ、結果平等と共生原理を追求する考えだ。仮に政府が1,000億円の使い方で迷っていたとしよう。自由主義者は迷わず大企業などのための減税を主張し、社会民主主義者は福祉の拡充や生活基盤の整備に使うことを求める▲米国の民主党や英国の労働党などは、基本的に社会民主主義の考えに近い。ただ、いずれが正しいとはいえない。だから、欧米各国は自由主義と社会民主主義の間を振り子のように行ったり来たりしている。たとえば、かつて1980年代に欧米では「小さな政府」が追求され、極端な行財政改革が推し進められた。その結果、競争が激化し、一般国民はあえぎ声をあげた。節度のない行財政改革で微笑んだのは富裕層ばかりである。その反動として、90年代に米国でクリントン政権が、また英国でブレア政権が誕生した。両政権の誕生は、決して偶然ではない▲わが国の場合、このような「振り子」は働かなかった。いや、その必要はなかったのだ。自民党は自由主義のみならず、社会民主主義の考えにも配慮したためだ。大企業のみならず中小・零細企業、富裕層のみならず中間・低所得者層にも十分に目配りした政策を実行したからこそ、唯一の国民政党になり得たのである。かつてソ連のゴルバチョフ元大統領は「日本は最も成功した社会主義国」と皮肉ったが、あながち間違いとはいえない▲しかし、小泉内閣になり、明らかに社会民主主義の要素は拭い捨てられた。安倍内閣になっても同様、いや加速している。今回の与党の税制改正大綱を見てみても、大企業優遇の性格が鮮明だ。間もなく決定される新年度予算案にも、国民や地方への「やさしさ」はまったく感じられない。だが、「分相応に生きろ」が政治の目指す方向であっては断じてならない。だからこそ、わが国にも「振り子の原理」を働かせるため、わが党は間違った政治にこれからも、そしてますます強く警鐘を乱打していく。

(平成18年12月20日)

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