コラム

衣の下の鎧が見えてきた

北朝鮮の地下核実験を受け、わが国の一部で核保有論議を提唱する者が出てきた。「安倍イズムの何たるかを理解している」と豪語してきた自民党の中川政調会長は、世論の批判を歯牙にもかけず、議論の必要性を繰り返す。のみならず、麻生外相までこれに相槌を打つ始末だ。かつてならば、総理は青ざめ、国会審議は空転し、最終的に外相は更迭に追い込まれただろう。安倍首相は「あくまでも政治家個人としての発言。内閣としても党としても、正式に議論するつもりはない」「政治家の言論封鎖はできない」というが、この言い逃れは実に苦しい▲そもそも外相や政調会長は、国家の政策決定そのものに加わる。心の中で何を思っていても自由だが、発言はおのずと制約されて然るべきだろう。一般の国会議員の立場とは大きく異なるわけだ。だから、たとえ「二枚舌」だの「豹変」だのと罵られても、安倍氏は首相になった途端、それ以前の発言を大きく軌道修正した。もしも閣僚や党幹部としての発言と、政治家個人としての発言が分けられるのであれば、安倍首相自身だって使い分けたはずではないか▲もともと安倍首相には「タカ派」のレッテルが貼られてきたし、実際、そのような考えがあったようだ。その安倍首相は、アジア関係を改善するため、あえてハト派を装った。だが、核武装論議を否定しないどころか、「容認」する姿勢からは、「三つ子の魂百まで」が感じられる。容認していないならば、外相はとっくに更迭されているだろう。やはりタカの爪は隠され、衣の下に鎧が用意されてきた。そういえば、安倍首相は、現行憲法下でもわが国が核武装できることを否定していない▲核保有論議の提唱は、とりわけマンガ世代、ゲーム世代にとっては、格好良く映る。だが、冷静に考えてみる必要がある。亀井代表代行の「いったいわが国のどこで実験できるのか」「逆に北朝鮮に口実を与えることにならないか」との発言は、正鵠を射ている。さらに、そもそも唯一の被爆国として、日本人はそれを許すだろうか。首相が「容認」していれば、中川氏や麻生外相の暴論を食い止めることは容易でない。だが、来る19日の知事選挙で、沖縄県民は日本を代表してこの暴論に「ノー」を突きつけることができる。沖縄県民がこの問題にケリをつけてくれることを願ってやまない。

(平成18年11月8日)

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