冥王星が太陽系の惑星から「除外」されたという。去る24日の国際天文学連合の総会で、そう決まったそうだ。長く慣れ親しんできた冥王星が「除外」されたことに、一抹の寂しさを感じる人は意外に多い。気の毒に思う人もいる。惑星の名前を諳(そら)んじていた人は、いずれ物足りなさを感じるだろう。だが、惑星から「格下げ」されても、冥王星が太陽系に存在することに変わりはないし、受験生や出版社などを除けば、多くの人にとっては何の影響もない▲驚いたのは、科学の世界で多数決が用いられたことだ。採択された惑星の定義に冥王星が合致してないなど、天文学的には、それ相当の理由があるらしい。観測技術の著しい進歩もあったようだ。だが、科学とは真理の探究を目的としているものだ。国連安保理であるまいし、多数決によって「事実」が決められてしまうことに違和感を覚える人もいる。議論を尽くして意見をまとめるべきだったのではないか、と思いたくもなる▲議論を尽くさず結論を急ぐ―どこかで見た光景だ。そう、1年前の郵政国会は、まさに然りであった。さすがに否決されても天文学連合が解散されることはなかっただろうが。そしてもう一つの共通点は、「なぜ結論を急がなければならないのか」といった疑問に、誰も明確に答えてないことだ。学会であえて多数決を用いずとも、十分な検証と議論を重ねていけば、穏便に結論を得ることはできたはずである。違和感なく、人々に受け入れられることは十分に可能だったのだ。急いだ背景に何かあるのではないか、と勘ぐりたくもなる▲その一方、郵政民営化と大きな違いもある。冥王星が惑星から「降格」されても、その軌道にも輝きにも、寸毫(すんごう)の変化も生じない。だが、郵政民営化の場合、郵政事業は大幅に縮小され、国民生活に大きな支障を来たす。いや、来年の秋を待たなくとも、すでにこの10月から多くの郵便局は無集配化され、時間外窓口や外務業務が廃止されるという。最初の不便が生ずるまであと1ヶ月、冥王星よりも近くの郵便局の行方の方がはるかに心配だ。
(平成18年8月30日)