コラム

浮かれて踊った小泉首相

はしゃぎ過ぎの卒業旅行――プレスリーの身振りを真似しながら踊る小泉首相に対し、誰しもが抱いた印象だろう。日本のみならず、米国の有力紙の多くも、一面にこの写真を掲載した。だが、果たしてわれわれは日本人として、このサングラス姿の首相を誇りに思えるだろうか。横田ご夫妻をはじめ、多くの日本人がめぐみさんの夫とされる金英男氏の会見を険しい表情で見ていた翌日、小泉首相は得意満面で歌い、踊っていたのである▲小泉首相にとり、今回の訪米は、本当はただの慰安旅行だったのかもしれない。「夢が叶った」とはしゃぎながら話す姿には、一国の宰相の重みは感じられなかった。日米首脳会談を否定するつもりは寸毫(すんごう)もない。だが、果たしてメンフィスまで行く必要はあったのか。みずからの夢を叶える前に、横田ご夫妻をはじめとする拉致被害者の家族の夢を叶える方が遥かに重要ではないのか。滋賀県知事選挙では自民党が推す現職候補が敗れたが、小泉自民党への批判票も少なからぬ影響を与えたといえる。▲百歩、いや五百歩ほど譲れば、今回の訪米を「卒業旅行」「慰安旅行」と割り切るなら、まだいい。だが、首脳会談で合意した共同文書「新世紀の日米同盟」は、かなり踏み込んだ内容となった。日米関係が日本外交の基軸であることは当然だが、米国の大統領と軽々に取り交わすには、あまりにも重大な内容であるといわざるを得ない。「共通の価値観」で「共通の利益」を追求していくことを謳っているが、要はこれからも無条件で米国の片棒を担ぐという意味だろう。ブッシュ大統領を喜ばせるための単なるリップ・サービスでは済まされないはずだ▲「外交関係を処理すること」が内閣の職務であるとはいえ、すでに退任が決まっている首相が外国に軽々と約束すべきことではない。行政改革と同様、外交でもみずからの路線を固めたい思惑が見え隠れする。さらに問題なのは、訪米前はもちろんのこと、訪米後も国会に何の報告もしないことだ。「三つ子の魂百まで」というが、小泉首相のいちじるしい国会軽視と国民無視は、最後まで変わりそうにない。それを「小泉らしさ」というなら、「反小泉」のレッテルを貼られることは、間違いなく名誉なことだ。

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